★報知映画賞:「それでもボクは…」が受賞 主演女優賞「夕凪の街…


麻生 加瀬 永作

報知映画賞:「それでもボクは…」が受賞 主演女優賞「夕凪の街…」麻生久美子、新人賞に夏帆

 今年話題を呼んだ映画に贈られる「報知映画賞」の授賞式が17日、東京都内のホテルで開かれ、「それでもボクはやってない」(周防正行監督)が作品賞に、主演の加瀬亮さん(33)が主演男優賞に選ばれた。主演女優賞は「夕凪の街 桜の国」(佐々部清監督)に主演した麻生久美子さん(29)だった。

 11年ぶりの映画で3度目の受賞となる周防監督は、えん罪をテーマにした作品について「取材を進めていくうちにどんどんつらくなっていった。今回の映画は絶対にうそがあってはいけないという気持ちで作った」と製作の苦労を語り、「もうちょっと(作品作りの間隔を)短縮できるよう頑張ります」とユーモアを込めてあいさつした。主演の加瀬さんは、撮影で被告席に立って「当事者になっても何もできない苦しさを感じた」と振り返った。弁護士役で共演した瀬戸朝香さんがお祝いに駆けつけ「加瀬さんは、法廷シーンで涙する場面ではないのにポロっと涙を見せたことがあって、その演技にゾクゾクしました」と絶賛した。

 主演女優賞の麻生さんは、受賞の知らせを車の中で聞いて「夢にも思わなかったので本当にびっくりして、声を上げて泣いてしまいました」と目を潤ませながら喜びを語った。助演女優賞は「腑抜けども悲しみの愛を見せろ」の永作博美さん(37)、新人賞は「天然コケッコー」の夏帆さん(16)がそれぞれ受賞。永作さんは「腑抜け〜」で演じたいじめられ役を「うざいけど親しみが持てるキャラに出来たらと思って演じました。開き直って、それが快感になった」と女優魂を見せた。

 新人賞の夏帆さんは「映画が楽しくなって来ました。たくさん勉強していろんな役を演じてみたい」と話した。夏帆さんには「天然コケッコー」の原作者の漫画家・くらもちふさこさんがお祝いに駆けつけ、「こんなに漫画のキャラクターにぴったりの女優さんがいると思わなかった」とコメントした。

 その他、助演男優賞は「しゃべれどもしゃべれども」「舞妓Haaaan!!!」の伊東四朗さん(70)、監督賞は「天然コケッコー」「松ケ根乱射事件」を手掛けた山下敦弘監督(31)が史上最年少で受賞。作品賞海外作品部門は、昨年11月に亡くなったロバート・アルトマン監督の「今宵、フィッツジェラルド劇場で」だった。毎日JPより

◆第32回報知映画賞・主演女優賞 表彰式が17日、東京・港区のザ・プリンス パークタワー東京で行われた。「夕凪の街 桜の国」(佐々部清監督)で主演女優賞に輝いた麻生久美子(29)は母親・春代さん(53)が見守る中、劇中で母親役を演じた藤村志保(68)から花束を贈られると、感激の涙。“2人の母親”からの祝福に「すごいたくさんすてきな女優さんがいる中、私を選んでいただいて」と喜びをかみしめていた。

 絶対泣くまいと決めていたが、こらえきれなかった。自らの名前が呼ばれ壇上へ。麻生が演じた皆実(みなみ)の母親・平野フジミ役で共演した藤村から「おめでとう!」と声をかけられると、真っ赤になっていた目から涙がこぼれ落ちた。
 「泣かない自信があったんですけれどね。突然、映像が流れると畳みかけられるように次々と…」。賞への喜び、役作りで悩んだこと、つらかった撮影…。さまざまな感情が渦巻いた。視線の先にはお世話になった人々が笑顔で拍手をしている。その中に実母・春代さんの姿もあった。「こういうところに来ると、私が成長しているところを見せられると思って」。実家の千葉で暮らしている母親を呼び、ちょっぴり恩返しできたことが麻生はうれしかった。

 「生みの母と育ての母。いやいや、生み育ての母親と仮の母親ですかね」。パーティーで藤村から声をかけられると春代さんと顔を見合わせて声を上げて笑った。映画の中では友達のような母娘を演じた。藤村から「久美子ちゃんは、この映画でひたむきに一生懸命。役になりきるための努力を目の当たりにしました」と賛辞を贈られると「本当に第2のお母さん。すごくあったかくておちゃめで、人生に役立ついろいろなことを教えてもらった」と感謝した。

 メガホンを執った佐々部清監督(49)にも久々に再会。「現場で私がずっと皆実でいられるように、自然に接してくれた」。賞へと導いてくれた監督と談笑。「佐々部監督とはいつ会っても久々という感じがしない。『夕凪―』が今でもいろいろなところで上映されている。高校などからの(上映)依頼が多いと聞いて『うれしいね』って」。現在の日本映画ではまれな息の長い作品になったことを喜んだ。

 晴れの舞台への衣装は、受賞が決まったときから決めていた。親友のデザイナー・福田春美さんのブランド「トリプティック」の純白ドレス。「服はもちろん、映画のときの精神状態まで全部知っている、本当にお世話になっている親友です」。悩みなどを相談してアドバイスを仰いだ友達と同じ場所で喜びを分かち合った。
 女優としてだけでなく一人の人間として。さまざまな人に支えられていると実感できた瞬間が麻生久美子はたまらなくうれしかった。

 ◆麻生 久美子(あそう・くみこ)1978年6月17日、千葉県生まれ。29歳。94年「三菱電機・ハイビジョン」のCMでデビュー。98年「カンゾー先生」(今村昌平監督)のヒロイン役で報知映画賞助演女優賞などを受賞。最近はドラマ「時効警察」でコミカルな演技を披露。イランの巨匠アボルファズル・ジャリリ監督の「ハーフェズ ペルシャの詩(うた)」が2008年1月19日に公開される。
 ◆夕凪の街 桜の国 原爆で父、妹を失いながらも母・平野フジミ(藤村志保)と明るく暮らす皆実(麻生久美子)は会社の同僚・打越(吉沢悠)と愛をはぐくみ始めたころ、原爆症に苦しめられ、26歳の若さで亡くなる。50年後、皆実の弟・旭(堺正章)の娘・七波(田中麗奈)がふとしたきっかけで、伯母・皆実の思い、家族のルーツを知る。こうの史代の人気漫画を映画化。
 ◆藤村志保「久美子ちゃんは情熱持ってる」 藤村志保大映時代にスター女優として市川雷蔵勝新太郎とたびたび共演。映画の隆盛を熟知しているだけに「久美子ちゃんは映画への情熱を持ったいい子よ」と期待する。薄着の麻生を見ると「寒くない? 風邪ひかない?」と我が子を心配するような優しさも。「夕凪―」では「私は小1で終戦を迎え、空襲も知っている。撮影現場で数少ない戦争を知る者として責任を感じながら演じました」と振り返っていた。

◆第32回報知映画賞助演女優賞 表彰式が17日、東京・港区の「ザ・プリンス パークタワー東京」で行われた。
 助演女優賞永作博美(37)は、小さな体でブロンズ像の重みを感じながら、小さな顔にいっぱいのキュートな笑顔をはじけさせた。

 03年に「ドッペルゲンガー」で活躍の場をテレビから映画へと転じてから4年。「私にとって、大きな作品になった。芝居することが楽しいと思うようになった」喜びの実感を胸に、映画女優としての意欲をかき立てた。
 今作は佐藤江梨子(25)演じる自分は大女優になれると勘違いしている主人公をはじめ、佐津川愛美(19)演じる漫画ばかり描いている義妹ら、ぶっ飛んだキャラクターがそろいにそろった。「特異なキャラクターばかり。負けないように頑張った」

 永作が演じたのは、孤児として育ち三十路を過ぎてようやく結婚相手に巡り合った薄幸の女・待子。「つかみ所がない役だから、やればやるほど不安になった」空気の読めない痛い女という感情表現の難しい役どころ。「目指したのは私が思う『うざいけども親しみの持てるキャラクター』」不安を打ち消すように吉田大八監督(44)が求めた“待子像”に自分のアイデアを加えて、役を作り上げた。

 その“怪演”が助演女優賞という結果に結びついたことで喜びもひとしお。表彰式後には、賞金50万円を手に「今日は私のおごりです」とサトエリらキャストやスタッフが集うパーティーへと繰り出していった。
 今年は「腑抜け―」のほか、たて続けに3本の映画に出演。「(『腑抜け―』が)終わったときに今まで何を守って仕事をしてきたのかと思った。自分で打破していったことは大きかった」と成長も実感。来年1月には初主演作「人のセックスを笑うな」(井口奈己監督)の公開も控え、さらに個性あふれる映画人として花を咲かせていきそうだ。

 ◆永作 博美(ながさく・ひろみ)1970年10月14日、茨城県生まれ。37歳。89年にアイドルグループ・ribbonを結成しブレーク。94年に解散後、テレビドラマでの活動が多かったが、03年の「ドッペルゲンガー」(黒沢清監督)で映画初出演して以降、映画が相次ぐ。156センチ。血液型B。
 ◆原作者・本谷さん祝福 永作には原作者の本谷有希子さん(28)が祝福の花束を贈った。「このお話を書いたモトヤって人、面白いなと思いました…冗談です」。19歳の時に執筆した戯曲の映画化については「我の強い作風を監督さんが自分のものにされて。素直に楽しめました」と語っていた。

◆第32回報知映画賞・新人賞 表彰式が17日、東京・港区のザ・プリンス パークタワー東京で行われた。
 400人を超える出席者が見守る中での表彰式に、夏帆は思わず「夢みたい」と声をうわずらせた。

 小5の時にスカウトされてから、モデル、CMなどで活躍してきたが、今回ほど多くの大人の前で話すのは初めて。「映画って楽しい、これからしっかり勉強してかかわりたい」と笑顔を絶やさずにあいさつしたが、終了後には「すごい緊張して…何をしゃべったのかあまり覚えてないんです」とまさに夢心地だったよう。

 少女漫画界の大御所、くらもちふさこさんの代表作を映画化した「天然コケッコー」で映画初主演。片田舎に暮らす15歳の少女の日常、ほのかな恋心を自然体に好演した。くらもちさんは花束を手にお祝いに駆けつけ「最初にお会いしたとき、(原作の)2次元のキャラクターが、3次元になってこんなにピッタリはまる子がいるのかと」と雰囲気そのものを称賛した。

 山下監督も監督賞を受賞し、共演した柳英里沙(17)、宮澤砂耶(7つ)も来場した。「とにかくスタッフのみなさんがいい人ばかりだった」と振り返り「こういうところでみんなに会えたのが本当にうれしかった。この作品は特別です」と目じりを下げた。

 慣れない大舞台に「緊張で疲れました」と漏らしたものの、終了後すぐにテレビ朝日系主演ドラマ「4姉妹探偵団」(来年1月スタート、金曜・後9時)の撮影の現場へ。今後はさらに忙しくなりそうだ。

 ◆夏帆(かほ)1991年6月30日、東京都生まれ。16歳。04年に日テレ系「彼女が死んじゃった。」でドラマデビュー。同年BS―i「ケータイ刑事 銭形零」で初主演。来年は「東京少女」など3本の出演映画が公開予定。身長163センチ。
スポーツ報知より