体操女子の鶴見虹子(こうこ)選手(17)が日本に43年ぶりとなる個人総合の銅メダル3年後のロンドン五輪のヒロイン候補

「超びっくり」――体操女子の鶴見虹子(こうこ)選手(17)が、ロンドンで行われている世界選手権で16日、日本に43年ぶりとなる個人総合の銅メダルをもたらし、3年後のロンドン五輪のヒロイン候補に名乗りを上げた。

 失敗して泣き、しかられて泣き、どこか弱々しい印象を与えていた少女は、いつの間にか頼りがいのあるエースに成長していた。

 小差のメダル争い。日本の応援団は息をのんで、得点掲示の画面を見守っている。3位は「ツルミ」。コーチに抱きしめられると、1メートル40の体は埋もれて見えない。自らの成績に「超びっくりです」と目を輝かせた。小さな歩幅で行進する姿は、少女のあどけなさを残していた。

 ところが、公式の記者会見で海外メディアに対し、堂々とした口調で「日本の女子も強くなってきたと思う」と宣言した。

 9月下旬、所属する朝日生命体操クラブの体育館。鶴見は「男子は強いけど『女子は弱くてダメだなあ』って、我ながら感じてた」とつぶやいた。そう、「体操ニッポン」は大抵、男子に向けられる称号だ。「でも、北京五輪で団体5位になって、『女子もいけるじゃん。みんなを見返してやんなきゃ』と考え出した」。弱々しい印象を与えていた少女は、いつの間にか日本チームの強化にまで思いを巡らせるほどの負けん気を周囲に見せるようになっていた。

 5歳で体操を始め、父の転勤で千葉県に移り住み、そこで中国人コーチに才能を見いだされた。小学5年生で、コーチとともに名門の同クラブへ。塚原千恵子監督が振り返る。「この子は日本を救うと感じた。オーラというか、そう思わせる雰囲気があった。教えて身につくものじゃない」。転機を生み出す人材――。見立ては正しかったようだ。

 現在、都内の通信制高校に籍を置き、鶴見は午前も午後も体操漬けの毎日。練習後の長風呂が、唯一のリラックスタイムだという。

( 読売新聞)