会員や勧誘者などL&Gに何らかの形でかかわった人は宮城県で約1300人。東北全体では数千人

 「当然だ」。健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー(L&G)」による組織的詐欺事件で、会長の波和二容疑者(75)ら同社幹部が逮捕された5日、東北の被害者は怒りの声を上げた。多額の出資金が返還されるめどは立っていない。被害者には、先行きへの焦燥感だけが残っている。

 警視庁などの合同捜査本部によると、会員や勧誘者などL&Gに何らかの形でかかわった人は宮城県で約1300人。東北全体では数千人に上るとみられる。
 福島県郡山市の男性(62)は定年後に家を建て直すことを夢見て、夫婦でこつこつためた全財産約4000万円を預けた。男性は「精神的に追い込まれ、自殺を考えたこともあった」と振り返る。

 夫婦は2000年ごろから貯金や退職金を取り崩し、「協力金」などの名目で送金した。「配当」名目で計1600万円余りを受け取ったが、07年2月ごろ配当が停止した。約2500万円の返還を求めて起こした訴訟は、ほぼ全面勝訴した。ただ、いまだに返還は一円もない。

 男性は市内で週4回、深夜警備の仕事に出ている。妻(58)も美容院の事務をして生活を支える。「妻とは今を生きようと誓い合った。金が返せないなら、せめて潔く罪を償うべきだ」。男性は語気を強めた。

 友人から紹介され、計1000万円の協力金を払った宮城県岩沼市の60代の男性は「老後に使うための資金だった」と意気消沈する。詐取された額は約700万円。波容疑者が逮捕前、朝からビールをあおる姿をテレビで見た。「少しは罪の意識を持てと言いたい」と憤る。

 「有名人が『円天商法』のPRにかかわっていたから信用できると思った」。今後の対応は、東京の被害対策弁護団に一任した。どれだけ金が戻るかは分からない。

 山形県上山市の60代の女性は山形県内の勧誘責任者とされる女性を相手に、計約1億3300万円の損害賠償を求め、ほかの被害者10人と一緒に山形地裁で争っている。

 女性は「07年3月に配当が得られると言うので、車を購入した。配当はなく、生活を切り詰めざるを得なかった」と言う。波容疑者らには「初めからだますつもりだったのか。本当のことを話してほしい」と怒りを込めた。

◎「救済に全力挙げる」/山形の弁護団、告訴も検討

 健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー(L&G)」幹部らの逮捕を受け、山形市の同社販売代理店を相手に山形地裁で係争中の被害対策弁護団の五十嵐幸弘団長らが5日、山形県庁で記者会見し「損害賠償訴訟の立証も大きく進展すると確信している。被害救済に全力を挙げたい」と語った。

 弁護団によると、訴訟の被告は、代理店の女性経営者とその親族の男性3人。県内の男女11人から出資金を募り、計約1億1000万円の損害を与えたと主張する弁護団に対し、事実関係の認否を留保しているという。

 五十嵐団長は「組織的な詐欺であることが明らかになった以上、被害救済のため、これまでに集めた金を自ら進んではき出すべきだ」と強調。捜査の動向を踏まえ、刑事告訴も検討するという。