「ひかりあれ東北」生活保護費を一括管理8万7000円が経費 「もらうのは月3000円」

アルコール依存症者の更生施設を営む仙台市の団体「ひかりあれ東北」が入所者の受給する生活保護費を一括管理していることが明らかになった。本人には少ない人で月3000円しか渡さず、公的扶助に目を付けた「貧困ビジネス」の印象を受ける。一方で「行政の手の届かない依存症者の受け皿」と理解を示す声もあり、行政の支援体制のすき間に入り込まれた側面を否定できない。


■8万7000円が経費
 「もらうのは月3000円。通帳も見たことがない」。元入所者の男性は不満を語る。

 団体は青葉、若林区で2007年10月から2施設を営み、計五十数人が共同生活している。ほぼ全員が保護費を受給し、月約9万円ずつ本人の口座に振り込まれている。

 通帳は団体が管理し、食費などの名目で差し引き、本人には月1万―3000円を渡す。3000円の人なら約8万7000円が経費として引かれた計算だ。

 関係者の話では、入所者は元路上生活者が多く、東京などの公園で「メッセンジャー」と呼ばれる男性から「酒をやめないか」と「スカウト」される。施設に来て医師からアルコール依存症の診断を受け、保護費の給付を申請する。

 入所者の一人は「金の使途が不透明」と憤る。「食事は三食とも自炊で献立も質素。経費が1人8万7000円もかかるのか」といぶかる。

 施設は1日2回、入所者同士で話し合う更生プログラムを行っている。しかし、2施設が開所して以来、依存症を克服して自立した人はゼロ。失跡して保護費が打ち切られた人は9人に上る。

■スカウト問題視
 仙台市の専門病院「東北会病院」の石川達院長は「アルコール依存症は回復に時間はかかるが、治る病気。団体がきちんとしたリハビリプログラムを持っているのかどうかが問題」と述べる。

 関連の全国組織「ひかりあれ」は06―07年、通帳管理や入所者の行動制限が問題となり、札幌市と那覇市の施設が閉鎖した。

 ひかりあれは全国で二十数施設を運営していたが、07年に本部制をやめ、ひかりあれ東北など各地の組織の独立運営に移ったとされる。だが、施設の土地と建物は全国組織の創設者らが所有。入所者のスカウトは今も全国で行われ、本部制が残っている疑いがある。

 貧困ビジネスに詳しいNPO法人「もやい」(東京)の湯浅誠事務局長は「東京で誘った路上生活者をほかの地方の施設に連れて来るなど手法に問題がある」と語る。

■「必要悪」の側面
 ひかりあれ東北は任意団体で運営に法的な制約はない。仙台市は「望ましい運営とは言えないが、指導権限がなくて介入できない」と説明する。

 福島大の丹波史紀准教授(社会福祉)は「金銭管理が、重大な人権侵害に発展する可能性がある。ケースワーカーが施設を頻繁に訪問するなど行政ができることはある」と市の関与を促す。

 アルコール依存症の路上生活者の自立を支援する公的な仕組みはほとんどない。仙台市のホームレス自立支援計画案にも、依存症者に関する項目は盛り込まれていない。行き場を失った路上生活者をひかりあれがすくい取った側面はある。

 福祉関係者は「行政はひかりあれのような団体を、問題点があると知りながら『必要悪』と認めてきた。支援策が貧弱だから貧困ビジネスが入り込む」と言う。

 石川院長は「アルコール依存症の路上生活者の自立を進めるには医療と行政、民間の自助団体の連携が不可欠。行政は入所施設や作業所の整備を検討してほしい」と話している。河北より