大自然が作り出す雪と氷の彫刻・樹氷。その樹氷が織りなす壮大な景色が楽しめる鑑賞ツアー

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大自然が作り出す雪と氷の彫刻・樹氷。その樹氷が織りなす壮大な景色が楽しめる鑑賞ツアーに参加した。

 2月上旬の休日。蔵王町役場近くから遠刈田温泉街を抜け、車で30分ほど県道を上ると、冬季閉鎖中の蔵王エコーライン入り口近くのスキー場「みやぎ蔵王スキー場すみかわスノーパーク」に到着した。車を降りると、標高約1100メートルの冷気が一気に肺に入り、思わずせき込みそうになった。

 ゲレンデハウス前で雪上車を待っていると、巨大な「ワイルドモンスター号」が現れた。「すごかったあ」などと、樹氷を間近に見た感激を口にしながら降りる先発隊の参加者たち。その言葉に胸を躍らせ、乗り込んだ。目指すは、標高約1600メートルに広がる樹氷原。

 樹氷は、氷点下でも凍結しない蒸気「過冷却水滴」が雪と混じり合い、蔵王のアオモリトドマツなどに付着してできる。本県側では、強い西風によって吹き付けられた雪が、山形県側よりも凹凸の大きな、野性的な形を作り出すのだという。

 雪上車は、閉鎖中の蔵王エコーライン上に降り積もった雪原を進み、刈田岳山頂近くの目的地に約40分で到着。降り立つと眼下に、360度の樹氷原のパノラマが広がった。晴れの日が月に1度あるかという、この時期には珍しく、まぶしいほどの太陽が樹氷原に降り注ぎ、南蔵王の山々がくっきりと見渡せるほど空気が澄んでいた。

 「何に似ているか、樹氷の形一つひとつを見るのも楽しいですよ」。ツアーガイドの亀山あられさん(27)のアドバイスに辺りを見渡すと、あったあった、4本足を踏ん張ったトラや、ひざをついている人など、様々な形に見える樹氷が目に飛び込んできた。

 夢中で写真を撮っていると、つい先ほどまでの晴天がウソのように、空が雲に覆われてきた。「ちょうどいいタイミングでしたね。皆さんは本当に幸運ですよ」と亀山さん。たった10分の観賞だったが、雪と氷が創造した“奇跡の芸術”をしっかりと目に焼き付け、樹氷原を後にした。

 (写真と文 江沢岳史)

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 樹氷ツアーは3月22日まで。詳しくは同スキー場(0224・87・2610)へ。

( 読売新聞)

参考 地元では宮城蔵王(宮城県側)と山形蔵王(山形県側)と使い分けています。