アカデミー会員は結局のところ、(売れたかどうかではなく)映画作りの土台や基本のところに一票を投じたのだ

ともに最多9部門で候補にあがり、「アバター」と「ハート・ロッカー」の一騎打ちと評されていた今回のアカデミー賞は、結果的にイラク戦争を舞台にした「ハート・ロッカー」の圧勝で終わった。しかし、現実の興行収入をみると「アバター」の優位は歴然としている。大衆から圧倒的に支持され記録を塗り替えた大ヒットを、「アカデミー賞受賞作の中でも最も収益が少ない作品」(米紙ニューヨーク・タイムズ)のひとつが破るというねじれ現象は、どのように起きたのか。




 「『アバター』は不当に扱われた、と感じている読者もいる」。米ニュースサイトMSNBCはアカデミー賞の発表を受け、読者から寄せられた書き込みをもとに、「ハート・ロッカー」の勝利をめぐる一般観客の受け止め方をこう分析した。



 巨額の制作費をつぎ込んだSF大作と、低予算社会派サスペンス。元夫婦の両監督による2作品は、あらゆる面で対照的だった。だが、アカデミー賞の選考では商業的な成功が絶対的な評価基準になるわけではない。現実に昨年の作品賞候補作には、娯楽大作として大ヒットした「ダークナイト」は、同時にそのメッセージ性や完成度も高く評価されたにもかかわらず、入らなかった。



 一般観客の視点アカデミー賞選考の乖離(かいり)とでもいうべきこうした現象に危機感を持った結果、今回、作品賞候補枠を従来の5枠から10枠に倍増させるという改革が行われた。そのねらいどおり、大ヒット作「アバター」は候補作に選ばれたが、最終的には娯楽大作を軽視しがちなアカデミー会員の志向は変わらなかった。



 米紙USA TODAYは、ノミネート枠の拡大は一定の効果を上げたとしつつ、「アカデミー会員は結局のところ、(売れたかどうかではなく)映画作りの土台や基本のところに一票を投じたのだ」と分析している。