東北では「秋田のイタヤ箕(み)製作技術」(秋田市、仙北市)と「新庄まつりの山車(やたい)行事」(新庄市)が重要無形民俗文化財に指定

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16日の文化審議会の答申で、東北では「秋田のイタヤ箕(み)製作技術」(秋田市仙北市)と「新庄まつりの山車(やたい)行事」(新庄市)が重要無形民俗文化財に指定された。記録を残すべき無形民俗文化財には「津軽の七日堂祭」(弘前市平川市)など3件が選ばれた。

重要無形民俗文化財

◎イタヤ箕 製作技術(秋田、仙北)/竹使わぬ技の典型

 竹ではなく、イタヤカエデを材料に箕を製作する。竹がほとんど自生しない北東北には、竹以外の植物を使った製作技術があり、イタヤカエデはその典型とされる。秋田市太平黒沢地区、仙北市角館町雲然(くもしかり)地区で伝承され、オエダラ箕、クモシカリ箕と呼ばれる。

 箕は、古くから農作業で使われた道具。製作方法は、イタヤカエデを年輪に沿って1枚ずつはぎ取り、芯を抜き取ったフジづるとともに、帯状に加工する。イタヤカエデの帯を横、フジの帯を縦にして、ゴザ目状に編んで、最後にU字に曲げたネマガリダケを縁に取り付けて完成させる。


◎新庄まつり山車行事(新庄)/勇壮で豪華な造り

 新庄まつりは毎年8月24―26日に開催される。まつりの中心となる山車は歌舞伎や物語の名場面を題材にした勇壮豪華な造りが特徴で、市中心部を練り歩く山車巡行は、雪国・新庄の短い夏を彩る風物詩として知られる。

 山車は市中心部の21地区の住民有志で組織する「若連」がそれぞれ毎年、造り替える。囃子(はやし)は市郊外の若者が担い、まつり本番では中心部と郊外の住民が一対となって巡行する。

 まつりは1756(宝暦6)年、新庄藩主戸沢正〓(まさのぶ)が、前年の凶作に苦しむ領民に活気を与えるために始めたのが起源とされ、250年以上の歴史を持つ。

(注)〓は言ヘンに甚

<記録すべき無形民俗文化財

◎気比神社絵馬市(青森・おいらせ)/家畜の多産を祈る

 気比神社の夏の例大祭に合わせた習俗で、毎年7月の第1土・日曜に開かれる。

 絵馬市では、境内に馬や牛、豚が描かれた紙製の絵馬を売る店が出る。参拝客は自分が所有する家畜の姿に似た絵馬を選び、店先でさらに詳しい特徴を絵馬師に書き込んでもらう。

 神社で祈願を受けた絵馬を持ち帰って、神棚やうまや、牛舎などに張り、家畜の多産や無病息災を祈る。

 気比神社は馬産地の南部地方にあり、馬の守護神「蒼前(そうぜん)さま」として古くから知られている。絵馬市の背景には東日本の蒼前神信仰があり、県内外から参拝客が訪れる。

津軽の七日堂祭(弘前、平川)/豊作や無病を願う

 年初めに農作物の作柄や天候を占う青森県津軽地方の行事。各地で行われていたが、弘前市岩木山神社鬼神社平川市の猿賀神社の3カ所で伝承されるだけとなった。

 神事の内容は各神社で異なる。「御柳(おんやなぎ)」「柳がらみ」という神事では、お札などを付けた柳の枝を打ったり、たたきつけたりして枝の落ち具合から作況を占う。枝は参拝者が持ち帰り、田のあぜなどに植えて豊作を祈願する。

 午王宝印(ごおうほういん)という印で病気退散を祈願する「宝印」、もちにくっついた米の量で豊凶を占う「臼鍋もち」、もちのまき方を見る「護摩ちまき」などの神事もある。

◎お枡廻し(福島・棚倉、浅川など)/保存会が原型伝承

 「お枡廻し(おますまわし)」は福島県棚倉町にある宇迦(うか)神社、馬場都々古別(つつこわけ)神社の信仰と関係する農業祭事で「お枡送り」などとも言う。

 宇迦神社の古記録によると、1623(元和9)年に始まり、福島県東白川郡や石川郡、白河市の一部でも行われた。ご神体である1升、5合、2合5勺(しゃく)の枡を数カ村が持ち回りで祭り、五穀の実りを祈願した。

 棚倉町福井、玉野、一色地区、浅川町簑輪地区で結成した御枡明神保存会が祭事の原型に近い姿を伝承している。3個1組の枡は現在、玉野地区にある。11月に4年に1度の動座の儀式を行い、一色地区に送られる。「お枡廻し」は茨城県大子町にも残る。河北より