第32回日本アカデミー賞、「おくりびと」が10部門で受賞最優秀主演女優賞木村多江

第32回日本アカデミー賞の授賞式が20日、東京・グランドプリンスホテル新高輪で行われ、「おくりびと」が本木雅弘(43)の最優秀主演男優賞など、10部門で受賞。昨年末に始まった映画賞レースの通算受賞数は60冠になった。同作は22日(日本時間23日)に米ロサンゼルスで開催される第81回米アカデミー賞外国語映画賞の候補。60冠の誇りを胸に、本木らは21日、現地に向け出発する。
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圧巻の強さだ。脚本賞からはじまり、録音、編集などスタッフが次々受賞し、最後の作品賞まで10部門。「おくりびと」がコールされ続けた。

 受賞あいさつに立った本木は顔が紅潮し、緊張した様子。「現場でグチグチと悩み続けている自分を受け入れてくれたスタッフや監督がいたから、この作品が不思議な現象のように愛されているのだと思います」と話す声は震えていた。

 本木と固い握手を交わした滝田洋二郎監督(53)はピンク映画から出発し、同作が43本目の監督作。万感の表情でトロフィーを手にし、「映画の世界に入っていつも迷いっぱなしでしたが、まだまだ撮り続けます。これからもずっと映画の『おくりびと』でい続けたいと思います」と誓った。

 「おくりびと」は、オーケストラをリストラされたチェロ奏者(本木)が、妻とともに田舎に帰り、遺体を棺に納める「納棺師」を生業にするまでの悲喜こもごもを描く。本木が映画化を発案。死者を送るための美しい所作の数々は観客に新たな発見を与え、ロングランヒット中。配給の松竹によると、前日の19日までの受賞数はブルーリボン賞主演男優賞など50冠。栄光はこの日、60冠になった。

 21日、世界最大の映画の祭典に向け、夫人で女優の内田也哉子(33)、妻役の広末涼子(28)、滝田監督と渡米する本木は、「ここ(日本アカデミー)で打ち止めだと思いますよ(笑)。夢のような話ですけど、ノミネートされただけで十分。お伊勢参りに行くような、物見遊山で行ってきます」とあくまでも無欲。国内外60冠を抱く最強の「おくりびと」が、日本映画初となるオスカー像を持ち帰ることができるか、運命の時は間もなくだ。
第32回日本アカデミー賞の授賞式が20日、東京・グランドプリンスホテル新高輪で行われた。

 日本アカデミー賞では、1996年度に「Shall we ダンス?」(周防正行監督)が正賞13部門を独占受賞したことがある。

 ちなみに、米アカデミー賞では、「ベン・ハー」(59年)、「タイタニック」(97年)、「ロード・オブ・ザ・リング王の帰還」(2003年)の11部門受賞が最多タイ。

 「或る夜の出来事」(34年)、「カッコーの巣の上で」(75年)、「羊たちの沈黙」(91年)は、作品、監督、主演男優、同女優、脚本(脚色)の主要5部門を独占した。





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最優秀主演女優賞の発表が、「おくりびと」一色のムードを打ち破った。受賞したのは「ぐるりのこと。」の木村多江(37)だ。昨年の受賞者、樹木希林(66)が名前を呼び上げると会場は「うぉ〜っ」。この日一番の盛り上がりを見せた。

 同作では妊娠中に胎児を失い、精神を病みながらも、夫の支えで再生していく妻を熱演。清楚な和服で登壇すると「(映画)初主演の私のようなものが受賞するなんて…。ドキドキしています」と喜びを表現。「メークさんに、マスカラがとれるので、泣くなと言われました」と涙をグッとこらえ、「この賞に見合う俳優になれるよう、心を磨いていきたい」とあいさつした。

 97年の銀幕デビュー以降、「日本で一番幸薄い役が似合う」との異名をとる木村。「(橋口亮輔)監督に(演技について)『ダメだ』を連発され、精神的に追い込まれながらの撮影でした」と明かす一方、「現場では(夫役の)リリー・フランキーさんの下ネタが楽しかったです」と意外な?一面ものぞかせた。

 授賞式後の会見では「ホントは(授賞式中に)緊張でお酒、飲んじゃおうかなって思ってました」とリラックスした表情。05年に電通社員と結婚。23日に1歳の誕生日を迎える長女には「子供に誇れるような母親になりたいです」とママの顔を見せ、「これからも“不幸のどん底女優”を歩み続けます」と笑顔で宣言していた。サンスポより