「生きることだけ考えた」転覆漁船の3人会見漁船「第一幸福丸

「生きることだけ考えた」転覆漁船の3人会見


 漁船「第一幸福丸」(8人乗り組み、19トン)の転覆事故で、4日ぶりに奇跡的に救出された乗組員3人が31日朝、東京都八丈町の町立八丈病院を退院した。

 静岡県下田市のまどが浜海遊公園にヘリで到着した3人は、出港から11日ぶりに家族らと再会を果たした。午後1時から記者会見に臨み、「生きることだけを考えていた」などと話した。

 いずれも甲板員の宇都宮森義さん(57)(静岡県下田市)、早川雅雄さん(38)(大阪市平野区)、鳰原(にゅうばら)貴光さん(33)(静岡市駿河区)らが伊豆漁協下田支所で会見。閉じこめられた3日間で何を考えていたのかについて、宇都宮さんは「生きることだけを考えていた」と話した。また、鳰原さんは、「どういう死に方をするのか。いつ、息が吸えなくなるのか考えていた」と振り返った。早川さんも「半分はあきらめていた」と心境を語った。

 船の中の様子について、早川さんは「3日間はかなりしけていて揺れ続けた」と語った。早川さんは、鳰原さんが「外に出たい」と言っていたのを2人で止めたことを明らかにし、「外に出るのは安全ではないと思った」と語った。なぜ外に出ようと思ったのかについて、鳰原さんは「経験が少ないので外に出たら助かると思った」と述べた。

 また、早川さんによると、船内で会話はほとんどなく、たまに「生きているか」と声を掛け合う程度だったという。漁師の仕事について聞かれ、「正直、船は怖い」と話した。

 一方、3人は午前10時半、しっかりとした足取りで公園のヘリポートに降り、家族らが次々と駆け寄った。鳰原さんは2人の子供を両脇に抱えながら顔にキスし、「大丈夫だから。目の前にいるよ」と言い聞かせ、抱き合って涙を流した。

 宇都宮さんと早川さんも、家族と握手したり、抱き合ったりして生還できた喜びを分かち合った。この後、食事をとって家族と水入らずの時間を過ごした。

( 読売新聞)