政府、月例経済報告で、商品やサービスの価格が下がり続ける「デフレ」に陥っていると正式に表明"どうなる国民生活"

政府、月例経済報告で「デフレ」正式表明
 政府は20日発表した11月の月例経済報告で、日本経済の現状を「緩やかなデフレ状況にある」と明記し、商品やサービスの価格が下がり続ける「デフレ」に陥っていると正式に表明した。


 政府のデフレ認定は、2001年3月〜06年6月以来、3年5か月ぶりだ。政府は09年度第2次補正予算や10年度予算を通じて景気対策を講じるとともに、日本銀行にもデフレ阻止に向けた金融政策での連携を求めた。

 菅経済財政相は20日の記者会見で「デフレは企業運営、国家財政の運営に好ましくない」と述べ、景気回復の足かせになるとの危機感を示した。

 国内の経済指標は、消費者物価の生鮮食品を除いた総合指数は、9月まで7か月連続で前年実績を下回っている。09年7〜9月期の国内総生産(GDP)も、物価を反映し家計や企業の実感に近い名目GDPが6四半期連続のマイナスに陥っていた。

 政府は、物価下落が続けば企業の売上高が目減りし、雇用悪化につながりかねないため、デフレ対策を重要な政策課題に掲げた。

 一方、景気の現状については、「持ち直してきている」とし、基調判断は4か月連続で据え置いた。

( 読売新聞)

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デフレーション(deflation)とは、物価が持続的に下落していく経済現象を指す。 デフレとも呼ぶ。物価の下落は同時に貨幣価値の上昇も意味する。同じ金額の貨幣でより多くのものを買えるようになるからである。なお、株式や債券、不動産など資産価格の下落は通常デフレーションの概念に含まない

デフレの経済学

デフレの経済学

概要
経済全体で見た需要と供給のバランスが崩れること、すなわち総需要が総供給を下回ることが主たる原因である。貨幣的要因(マネーサプライ減少)も需給ギャップをもたらしデフレへつながる。

19世紀の産業革命の進展期においてはデフレは恒常的な通貨問題であり、金本位の退蔵(グレシャムの法則)に見られる貨幣選好や技術革新による供給能力の飛躍的な進展がデフレをもたらしていた。ケインズ政策や管理通貨制度が普及した後はインフレーションに比して圧倒的に少ない。

デフレーションという用語は、本来、物価の持続的な下落を意味するものである。しかしそれだけでなく、景気後退を伴う物価下落をも意味することがしばしばである。そこでデフレーションが景気(経済成長率)の拡大を伴うものであるか否かによって、これを良性と悪性とに分類しようとする議論(良いデフレ論争)がある。

生活への影響
デフレは個々の経済主体にとっては好影響・悪影響が存在する。

代表的な影響は債権・債務問題である。物価の下落は、実質的な返済負担増となる(デットデフレーションDebt Deflation)。そのため、借り手である債務者から貸し手である債権者への富の再配分が発生する。物価下落によって実質金利が上昇する。

好影響
物価下落により実質金利(実質利回り)が上昇する、すなわち同額の名目利子の受け取りであっても実質価値が上昇する。つぎにデフレの局面では物価下落を織り込んだ金利が形成されるため、市中金利は低下する。そのため国債などの債券保有者は、すでに保有している(高利回り)債券の価格が上昇し名目資産・実質資産とも増大する。

制度次第であるが、名目額が固定された収入(年金など)がある場合、物価の下落により実質的な生活水準が向上する。

悪影響
住宅ローンなどで債務を抱える家計は、物価の下落によって実質的な債務が増大する。

名目金利の低下により、市中変動型の債権(普通預金など)の利子収入は減少する。

名目金利の低下する速度以上の物価の下落が発生している局面では、実質金利が上昇し投資活動が低下する。これが経済活動を停滞させる要因となり、賃金の下落や失業、ひいては消費支出の減少とさらなる企業活動の停滞をもたらす要因となる(デフレスパイラル)。

対策
デフレ対策には直接的には金融政策が採用される事が多いが、根本的な経済構造や国際分業構造、金融部門の資本不足による信用不安などに問題があり慢性的なデフレーションを招いている可能性があり、財政政策や産業育成政策など経済構造そのものを改善する努力も必要である。

デフレーション対策の例)

政策金利公定歩合の引き下げ
外国為替相場への介入
低所得者への所得保障や最低賃金の引き上げ
政府保証や政府買い取り制度(金融資産、穀物原油など基幹資源など)
累進課税制度など税制による所得の再分配(ビルト・イン・スタビライザー)
財政出動による総需給ギャップの改善  など
デフレスパイラル [編集]
経済全体で、供給過多、需要不足が起こって、物価が低下する。商品価格が低下すると、生産者の利益が減り、利益が減った分だけ従業員の賃金が低下する。また企業の利益が減ると雇用を保持する余力が低下するので失業者が増える。従業員と家族は減った賃金で生活をやりくりしようとするため、あまり商品を買えなくなる(購買力の低下)。その結果商品は売れなくなり、生産者は商品価格を引き下げなければならなくなる。

物価が下がっても、名目金利は0%以下に下がらず、実質金利が高止まりし、実質的な債務負担が増す。債務負担を減らすために借金返済を優先する企業個人が増え、設備投資や住宅投資が縮小される。投資の縮小は総需要の減少へつながり物価の低下をもたらす。

上記のような循環がとどまることなく進むことを「デフレスパイラル」と呼ぶ。政府による買い入れや物価統制など直接的な手段が有効であるが、現代の経済においては消費者物価の継続的な低下に対して金融緩和や量的規制緩和、為替介入などの金融政策で対処することが多い。所得税の累進性や社会保障はビルト・イン・スタビライザーの機能をもつため物価の安定に機能するとされている。

一方で80年代のレーガノミックスサッチャリズムによる小さな政府政策以降、ワシントン・コンセンサスに見られる新自由主義市場原理主義が先進主要国の政策に導入されており、ビルト・イン・スタビライザーの中心でもあった累進課税と失業者救済制度が「自由競争を損ない、経済活動を萎縮させる」と批判の対象とされて機能しなくなつつあり[1]、2007年金融危機発生後の現在では世界規模でのデフレスパイラル発生が懸念されている。


デフレの歴史
1880年代前半に大蔵卿(1885年の内閣制度にともない大蔵大臣)の松方正義が緊縮財政を行い、それまで濫発されていた不換紙幣を償却し日本銀行を設立して銀本位制を実現させた。緊縮財政の結果、デフレ不況となった。(松方デフレ)

濱口雄幸首相と井上準之助蔵相が緊縮財政を行い、1930年に円切り上げ(円高)となる旧平価で金本位制に復帰し(いわゆる金解禁)、デフレ不況となった。

世界恐慌下のアメリカにおいては、当初、財政均衡主義が主流だったため、ビルト・イン・スタビライザーの効果が低下し、デフレスパイラルに陥った。設備投資はほぼ壊滅的とも言えるほど減少し、失業率が25%に達した。

第二次世界大戦後、1949年に超均衡予算を中心とするドッジ・ラインが実施されて、デフレ不況(ドッジデフレ・安定恐慌)が起こった。

急激な利上げと総量規制による貸出の制限でマネーサプライの伸びがマイナスになるほどの引締め政策でバブル経済が崩壊した1992年以降、ディスインフレ物価上昇率の低下)の傾向を示すようになり、1997年の消費税等の増税・歳出削減などの緊縮財政により消費者物価上昇率がマイナスになり、デフレの様相を呈するようになった。1997年に発生したアジア通貨危機やこれに続いた日本の金融危機も原因として挙げられている。日銀による2000年のゼロ金利政策解除や2001年の国債30兆円枠による緊縮財政などの経済政策の失敗により、デフレ不況がさらに激しくなった。

1990年代から21世紀初頭に日本において見られた資産価格のデフレーションは、主に中央銀行日本銀行)の金融引き締めがその原因の一つであったと考えられており、1990年代以降の日本の経済停滞(いわゆる「失われた10年」)の相当部分は、日銀の金融引き締めに端を発した資産デフレに責任があるとする向きもある。

デフレ期待を解消し停滞を打破するために量的金融緩和が開始された。この政策には、ゼロ金利の長期化が予想されることで中長期の金利を低下させる時間軸効果があるとされる。名目金利は0%までしか下げられず、デフレ下ではそれ以上の金融緩和ができない(流動性の罠)とされるが、インフレ期待などを通じた間接的な効果があるかどうかについては、様々な議論がある。

2006年では、2002年からの緩やかな景気回復により消費者物価指数ベースでのデフレ終了が見込まれているが、量的緩和解除が時期尚早でデフレが終わらない可能性を指摘する人もいる。

そして2008年の世界金融危機とそれに伴う不況により、デフレスパイラルは日本のみならず世界規模での再来が懸念されている。2009年11月の日本政府の月例経済報告において「緩やかなデフレ状況にある」と3年5ヶ月ぶりにデフレを認めた。

ディスインフレーション
物価上昇率(インフレ率)が低下すること、すなわち物価は上昇しているが大きく上昇しなくなることはディスインフレーション(disinflation)、略してディスインフレであってデフレではない。デフレーション物価上昇率(インフレ率)がマイナスになることである。