SF超大作『アバター(Avatar)』とイラク戦争を題材にした『ハート・ロッカー(The Hurt Locker)』は元夫婦監督アカデミー対決

第82回アカデミー賞(Academy Awards)で最多9部門ずつにノミネートされたSF超大作『アバターAvatar)』とイラク戦争を題材にした『ハート・ロッカーThe Hurt Locker)』。3月7日の授賞式でこの2作品は、ダビデゴリアテのような対決を見せてくれるかもしれない。



 元夫婦のジェームズ・キャメロンJames Cameron)とキャスリン・ビグロー(Kathryn Bigelow)がそれぞれメガホンを取った2作品は、ノミネート数が同じということ以外、全くと言っていいほど類似点がない。



 3〜5億ドル(約270〜450億円)と言われる史上最高額の製作費を費やし最新技術を駆使した『アバター』は、『タイタニック(Titanic)』の興行収入歴代最高記録を更新し、画期的な3D作品と言われている。



 その『アバター』が視覚効果で観客に衝撃を与える一方、『ハート・ロッカー』はイラク爆発物処理を行う米兵の張り詰めた日々を通して過酷な現実を描いている。さらに製作費も『アバター』とは違い、わずか1500万ドル(約13億5000万円)で、興行収入に至っては『アバター』の約125分の1の1600万ドル(約14億5000万円)だ。



 しかし、3月7日の授賞式で『アバター』が第2の『タイタニック』になるというのなら、『ハート・ロッカー』はその行く手を遮る氷山のような存在になるかもしれない。興行収入が振るわなくても、『ハート・ロッカー』が作品賞の本命に挙げられているのだ。



 批評家が高く評価する『ハート・ロッカー』はオスカー前哨戦と言われる数々の映画賞を受賞してきた。先週も女性としては史上初の全米監督組合(Directors Guild of AmericaDGA)賞を獲得したが、同賞の62年の歴史の中で、同賞の受賞者とアカデミー賞監督賞の受賞者が異なったことは6回しかなく、監督賞を取った作品が作品賞に輝くことも多い。



 米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)の映画・音楽賞専門サイトtheenvelope.comの評論家トムオニール(Tom O'Neil)氏は、『ハート・ロッカー』が間違いなく有力候補だと語る。



「混乱はない。業界の意見は一致している。『ハート・ロッカー』は興収もぱっとせず、スターも出ていないから不思議だけどね」



 また、2作品の対決がダビデゴリアテのような闘いになるだろうという話には同感だと言ったオニール氏だが、監督同士が元夫婦だということに言及し、「もっと良い闘いになるかもしれないね。だって2人はかつて、ゴリアテゴリアテ夫人だったんだから」と冗談を飛ばした