5年に1度の国勢調査「個人情報」と拒否オートロックも壁 に

国勢調査 門前払い続出 「個人情報」と拒否/オートロックも壁 





 5年に1度の国勢調査が1日を基準日にして各地で行われ、県内でも調査員が各世帯を訪ねて調査票を配っているが、門前払いされるケースが相次いでいる。甲府市など市街地では、オートロックの集合住宅が増え、住人と面会できないことが多い。プライバシーを理由に回答を拒否、居留守を使う住民もいて、ストレスを感じる調査員は少なくない。自治体は「国勢調査は効率的な住民サービスの基礎データ。ぜひ協力を」と、幅広くPRしたいところだが、政府の事業仕分け予算カット。打つ手が限られ、頭を悩ませている。



仕分けで予算減、PR限界

 「何でこんなにいないんだろう…」。甲府市北部マンションで、調査員の広瀬智美さん(36)は思わず声を出した。25軒の呼び鈴を鳴らして調査票を渡せたのは2軒だけだった。以前も部屋に電気がついていたのに、呼び鈴に出てもらえなかった。このマンションでは50軒分の調査票を渡すことになっているが、まだ半分。気持ちばかりが焦ってしまう。

 今回の調査でマンションと民家を合わせて70世帯余りを担当することになった。ある民家では「役所では戸籍上、100歳以上の人が次々生存する体たらく。調査しても無駄」と難癖をつけられた。オートロックで呼び鈴が見当たらず、玄関までたどり着けないアパートもあり、途方に暮れたこともあったという。

 前回調査で門前払いが続発したため、国は住人に調査票を手渡すという原則を見直し、最低3度訪問して不在の場合、郵便受け投函(とうかん)することも認めた。回収では、調査票を調査員に渡すか、市区町村に直接郵送するかを住人が選べるようになり、調査員の負担軽減が図れた。

 それでも現場の環境は大きく変わっていないという。広瀬さんは「調査員の友達と『うちもまだ渡せてない』って泣き言を言い合っている。調査に携わるのは初めてだけど、思ったより大変」と話す。

 甲府市には「インターホン越しに『何に使われるか分からない調査に、個人情報を出したくない』と拒否された」など、悩む調査員から電話が寄せられる。

 市内では中心部などに分譲マンションが次々でき、オートロックの集合住宅が増えた。1〜7日、調査員が調査票を回収に当たるが、統計係の渡辺努係長は「回収率低下の要因になりかねない」と懸念する。

 県や市町村は、調査への協力を求めるPRを展開、調査員を“後方支援”するが、予算が少ない。県の場合、事業仕分けで調査関連の国からの交付金が前回の2千万円から700万円に減額された。テレビや新聞などの広告を減らし、前回7千枚余り作った宣伝クリアファイルの製作はやめたという。

 19回目となる国勢調査は、回を重ねるたびに回収率が減少。県によると、全国の回収率は前回の2005年が95・6%、02年は98・3%、1997年が99・5%。前回から始まった都道府県別の回収率で山梨は98・6%だった。