「確実に増えている」仙台市内の路上生活者数の一斉調査
仙台市のホームレスを支援する5団体が14日未明、市内の路上生活者数の一斉調査を行った。具体的な数字は集計中だが、「確実に増えている」という。市の助成の対象外のネットカフェ生活者らも急増しているといい、支援者らは「路上に出るのは時間の問題」としている。
「駅だけで15人いる」
「あの人知らないよね」
最低気温が零下2度、夕方に降った雪がすっかり凍り付いた14日の午前1時。NPO法人のワンファミリー仙台や仙台夜まわりグループなど5団体で作る「仙台協友会」のメンバーが一斉に活動を開始した。この日は、03年から厚生労働省が市民団体などに委託して行っている全国一斉調査の日だ。
居場所の特定しやすい夜中に、駅構内や地下道、公園など、路上生活者が集まりそうな約100カ所を回り、街が動き出すまでの貴重な睡眠を妨げないよう、静かに人数を数えていく。
仙台市の路上生活者は04年に253人と過去最多となった。このため、市は03年と05年に計50人が入所できる自立支援センターを設立。民間の支援団体も無料宿泊所を16カ所、立ち上げた。その結果、年間130〜150人ほどが路上を「卒業」したとみられ、昨年の調査では100人にまで減っていた。
厚労省の委託事業として行っているため、この日の集計結果は全国での集計がすむ3月まで明かせないというが、4年ぶりに増加することは間違いないという。当初30人程度と予想していた仙台駅周辺だけでも、この日39人が確認された。仙台夜まわりグループの今井誠二理事長は「これだけ支援し、自立する人がいる中でまだ増えているということは、路上に落ちる人数が爆発的に増えているということだ」と話す。
同グループが青葉区の五橋公園などで行っている炊き出しには仙台市の補助金は30人分しか出ないが、最近は40〜50人が参加するのが当たり前になった。ワンファミリー仙台が路上生活者に対して毎週行っている掃除活動でも、この1年で参加者が2倍ほどに増えたという。参加者のほとんどが建設会社や派遣会社をリストラされた人や多重債務者だ。昨年後半から急速に20〜30代が現れだしたという。
県外出身者も多い。東北地方から関東、関西に働きに出た人たちが仙台で足を止めることが多いからだ。路上にいた男性の一人は、出身の市に戻ったところその市の職員から「仙台に行きなさい」と勧められ仙台に来たと話した。
この日の調査を行った支援団体のメンバーは、調査が「不十分」と口をそろえる。
インターネットカフェやサウナに泊まったり、車上生活をしたりして暮らす「ホームレス予備軍」や、お金がある時だけこうした施設に泊まる「グレーゾーン」の人を数えていないからだ。トヨタやキヤノンなど多くの大企業が、派遣労働者の契約を順次打ち切っていくと昨年末、発表した。15年以上路上生活を続ける元中華料理人の男性は「景気の悪化と路上生活者の増加には時間差がある。春はどんと増える」と語る。
「今はまだなけなしの貯金などでぎりぎり踏みとどまっている人が調査の何倍もいる。彼らが2、3月に路上に出ることになるのでは」。仙台協友会の青木康弘代表世話人も懸念している。